翻刻             (漢字かなまじり表記)

り。ゆるし色とは、くれなゐ・むらさ   り。聴し色とは、紅・紫        
きの御きぬなり。かやうにめでたき    の御衣なり。かやうにめでたき     
御めぐみありて、又ならぶ人もな     御恵みありて、又並ぶ人もな      
かりけり。かくのごとくのおりふ     かりけり。かくの如くの折節、     
し、都におそろしきをにいで       都に恐ろしき鬼出で          
きて、うつくしきちごにばけて、     来て、美しき稚児に化けて、      
夜ごとに人をとりくらひけり。      夜毎に人を取り食らひけり。      
そのなは、しゆてんどうじと       その名は、酒呑童子と         
いふ。みやこの中さはがしき事      言ふ。都の中騒がしき事        
申ばかりなかりけり。かのをにを     申すばかりなかりけり。かの鬼を    
うつべきよしを、らいくはう・ほう    討つべきよしを、頼光・保       
しやう二人のしやうぐんにちよ      昌二人の将軍に勅           
くをくださる。              を下さる。          
                                       
              (10丁裏)